今や海外でも活躍するカホン奏者「那有多」という青年がいる。彼は間違いなく今後の関西音楽シーンをリズムで彩っていく人物である。今回はそんな那有多の思う音楽と、彼のルーツに迫ってみた。

―地元は北海道だそうですが、現在関西に拠点を移した経緯、音楽の道に進んだきっかけはなんですか

僕、もともと大学院で薬学について学び研究していたんです。並行して音楽をしていたのですが、最初は薬の研究をしたくて就職先として関西に越してきました。二足の草鞋で音楽活動をしていたんです。ですがある時、音楽仲間に「海外に行って活動してみよう」と声をかけてもらい、海外に半年ほど行くことを決めました。その時、自分の中で音楽をもっと深めたいと思い、思い切って退職しました。思い切った決断をしましたが、そのおかげで今があると思っています。

―パーカッションや、カホンという楽器を選んだ理由、魅力は何だと思いますか

もともと高校時代友人とバンドを組んでドラムを叩いていたんです。でもある日ベース担当の子がインフルエンザになってしまって「明日のライブどうする?」てなったときに、当時の友人が「カホンっていう楽器があるから貸してあげるよ」と言ってくれたのがきっかけで、カホンを知りました。初めて触れてみたときに低音も高音も出るからこれはいけるな、と思ったのが僕のスタートです。その後、カホンをメインで活動しようと思った出来事が二つあります。一つ目は、仙道さおりさんのカホンワークショップに参加したときに、カホンとドラムの違いを知ったんです。「こんな叩き方もできるんや」可能性を感じました。もう一つは、カホンは持ち運びが便利なので、当時北海道の音楽仲間にカホンで一緒に演奏しようと声をかけてくれる人が何人かいて、参加していたらどんどん声をかけてもらえるようになったんです。

―サポートするときに意識していることやリズムを作るときのこだわりはありますか

そうですね、実は最近本番もぶっつけが多いんですよ(笑)最近は事前に譜面を作っておいて、当日のリハで合わせることが多いですね。カッチリとすべてのリズムを決めていくというよりも、予めざっくりと譜面起こしをしてサポートでアーティストさんと合わせる時はその方の演奏をみながら「ここにアクセントを入れて、ここは抑えめに」とか考えていますね。ポップスのサポートが多いんですが、ある程度のリズムパターンがあるのでどれが合うかなと引き出しから出してやってみるようにしています。最低限キメ(大きなアクセント)は確実に決めて後は細かい装飾音を入れたりアーティストさんの音と対話するようにリズムをくっ付けていくようにしています。なのでアドリブが多かったりしますね。その場でたたき台を作って、遊ぶような感じで演奏しています。その分、アドリブの欠点として好き放題すると手癖が出てしまうことがあるので、崩しすぎないようにしています。忠実に叩くだけだと面白味がないので、バランスを取るように意識しています。他のパーカッションの方は歌詞を意識していると時折聞くんですが、僕の場合はリズムのコード進行の流れを意識することが多いのでインストゥルメンタルのサポートも多いです。

―パフォーマンス中に心がけていることはなんですか

一番は音を楽しむことを忘れないことですね。ありがたいことに聞いていただく方に「楽しそうに叩くね」とよく言っていただけるんです。ライブ当日でも、楽しくライブをすることを第一に心に決めて挑んでいます。バラードやガチガチの攻めた曲などありますが根本は音楽を楽しむことを心がけています。音楽をしていると、誰しも楽しさが薄れて苦しくなる時もあるんですよね。本来音楽は楽しいんだという気持ちがあってこそだと思うので。悔しさが残ったライブがあった日はやっぱり心が揺れてしまうときなので今後も楽しむことを忘れずいきたいです。

―打楽器チーム「LA SEÑAS-OSAKA(ラセーニャス大阪)」での活動を通して那有多さんの音楽にどう影響がありますか

LA SEÑAS-OSAKAに入ったのは数年前、海外遠征に行く前くらいなんですが、「入りたい!」と意思を示していたら「おいでよ!」と声をいただいたんです。ここではカホンではなくジャンベ(西アフリカ起源の太鼓)を使って演奏しています。様々な楽器を集団で鳴らすので、音がぶつかり合って喧嘩しないように周りの楽器の音域を意識しています。何も考えなければうるさいだけになってしまうので、自分の楽器が今どの位置の音程にあってどう叩けば周りと溶け込むリズムを生み出せるか考えていますね。それは普段のサポートなどにも活かせることで、高い音が鳴っているときは重ねて音圧を上げればお客様に伝わるなとか、あえて違う音域で鳴らしてバランスをとるとか。その部分はLA SEÑAS-OSAKAにいるからこそできる学びだと思っています。

―那有多さんが伝えたいパーカッションのメッセージや思いはありますか

サポートで演奏しているときはアーティストさんの楽曲にメッセージが込められているのであえて僕自身はメッセージ性は持たないようにしています。そのアーティストさんの楽曲のクオリティが増幅できるようにしています。ソロの時は、カホンってこんな表現もできるんだという発見をしてもらえるように意識しています。他の人がやっていないことをやってみようと、カホンの横を叩いたり最近は後ろも叩いたり足使ったりと、ソロの際には色んな音を入れて楽しんでもらえたらと思います。カホンはシンプルに叩くだけではなくて魅せる力もある楽器なんだということを伝えたいです。

―今まで関わったイベントで面白く印象的だったものは何ですか

全部印象的で面白いので難しいですが挙げるとすれば…北海道を出る時に「那有多まつりやりなよ」と声をかけていただいて、呼べる人を全員呼んで全組コラボでイベントをしたときですね。35曲くらい演奏しました。(笑)かなり僕の中で記憶に残っていて印象的なイベントでした。もう一つあげるとすれば僕アニソンカバーもするんですが、アニソンの早いビートでカホンで叩くという余り見ないカタチでイベントをしたことも面白かったですね。

―海外での音楽シーンで学んだことは?

海外に行って、日本との音楽シーンの違いはかなり感じましたね。海外では「これからボウリングいく?ライブバーいく?」というような生活の中で音楽に触れに行くことが馴染んでいるんだなと思いました。日本では集客という課題やノルマがあり、演者がお客様に来てくださいと連絡される方もいるかもしれないですが海外ではその場所に既に人が集まっているんです。お酒と音を気軽に楽しむという文化がそこにはあって、その空気が僕は魅力的に感じています。

―今後挑戦してみたいことや、新しいスタイルを目指すカタチはありますか?

正直今、悩んでいるところなんです。サポートとして突き詰めていけばスタジオミュージシャンとして成長できるだろうしソロのプレイヤーとして進めば一人のアーティストとして活動を広げていける。今両方をしているカタチなので、どちらの道でいくのが自分の目指すステージなのかなと日々考えています。ただそれを逆手に捉えると、両方をしている人が少ないなと思っていて。そこで、日本でも海外でも場所を問わず、大きな会場でもアットホームな場所でも、求められる場所に柔軟に対応できる力を持つことを今目指しています。プレイヤーとしての自分の価値を最大化させたいという思いがありますね。

―最後にここまで読んでいる方にメッセージがありますか

一番伝えたいのは、この記事を最後まで読んでくださって、本当にありがとうございますという感謝の気持ちです。リズムに興味のある方にぜひ会場で聴いてほしい、生のライブを観てほしいなと思います。パーカッションってこんなこともできるんだ、人の心を動かすリズムはこういうことかということを伝え続けていきたいです。カホンをこれから始めようかなという方にはレッスンもしているので、気軽に声をかけてもらえたらなと思います。一緒に音を楽しめる出会いがあることを楽しみにしています。本当に読んでいただきありがとうございました。

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