兵庫県姫路市を拠点に日本各地で歌を歌う、かわらかのという女性シンガーソングライターをご存じだろうか。一度聴くとその世界観に惹きこまれる彼女の音楽のルーツとは。そして最新アルバム「海に恋」の制作の裏側に迫ってみた。

いつからシンガーソングライターとして活動をはじめましたか?

大学時代に弾き語り同好会に入っていて、ギターを本格的に練習しはじめたのは大学3回生の頃でした。四回生の時にはじめて外でライブをしました。

楽曲が生まれる際のきっかけはどこからきますか?

ギターのフレーズを弾きながら、ふと「言葉が向こうからやってくる。」感覚がある時があります。あとは、普段思っていることなどを書き留めて曲にしたり。言葉から入って作っていくことが多いですね。

アルバム「海に恋」の制作背景についてお聞きします。ジャケットも印象的ですが、どういう想いが込められていますか?

ジャケットは、ハナさんという方に描いていただきました。

実はこの「海に恋」のジャケット、ネットレーベルからリリースした「恋e.p」のジャケットとして書いていただいたもので、アナログ画なんです。改めて色味などを調整してもらって、大きさも裏の面まで使わせてもらいました。「恋e.p」は私の「恋」という曲と、色んな方によるリミックスが収録されています。

「海に恋」アートワーク:hana
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私自身、水族館や海に関する画像とか。海に関するモノに触れながら楽曲を書くことが多くて、海を見に行ったり海の夢をみたり。今回リリースした「海に恋」は海に触れながら生まれた曲たちをポンってまとめるイメージで制作しました。「恋」もそのうちの一つで、今回も入れようと思い、海のテーマに合うよう元の「恋」を残しつつ新しく編曲していただきました。

「海に恋」制作に欠かせないフナハシダイチさんとの出会いのきっかけは?

私がCDを制作したいと相談したときにフナハシダイチさんを紹介してくれた方がいて、出逢わせてもらったのがきっかけです。フナハシダイチさんは「u-full」というバンドをされているんですが、u-fullの楽曲の音が自然派というか、森の中をイメージするような音作りをされていて。変わった楽器を使われていたり世界観がバーっと広がるような音楽をされていて。聴いた時に「うわ、素敵!」と思って。おこがましいけれど私の世界に合うかもと感じてお願いしました。

「海に恋」
アレンジ、レコーディング:フナハシダイチ
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「海に恋」の中で、一曲だけ選んでその楽曲に込めた思いを聞かせてください。

今回のアルバムは自分の中でも思い入れのある曲を詰め込んだので全部の曲に自分の思いが詰まっているんですが…。聴いてくださった方によく声をいただくのが「クジラのパレード」っていう曲なんですけど、自分の中でも結構物語に落とし込みすぎて、きっと聞いている人は「どういう曲なんだろう」と思っていると思うんです。編曲なんかも拘りを持って意見を伝えさせてもらいました。

私は自分で自分の過去の傷をえぐりにいって、もう一回傷つくみたいなことをやってしまう悪い癖があるのですが、「クジラのパレード」に関してはもういい加減、前を向きなさいよっていう意味を込めています。サビの歌詞に「クジラは死んだ。もうじきあなたまで飲み込んで灰になるよ」っていう部分があって。ちなみに、クジラが死ぬと体内のガスで爆発することがあるのはご存じですかね。

過去のことは終わったしあなたを傷つけてきたものはもうここにはいない、その次に「死骸を食べて何回生まれ変わった 探し物はこの目の中」という歌詞なんですけど、何回もそのことを考えて死骸を食べて食べて食べきって生まれ変わってきたんだから、もういい加減そこにはもう何もないよと。答えは自分の目の中にあるんだよ。という想いを込めた歌詞になっているんです。

私他の楽器のこととか音楽用語がわからないので、「ここにこういう音を足してください」というのがうまく言えなくて「今の編曲は深海に人魚が漂っている感じで凄く綺麗な雰囲気になっていますがそこに一滴の絶望を加えられませんか?」ていう凄く自分なりの表現で伝えてアレンジしていただきました。そうしたらフナハシダイチさんギターでクジラの声を再現したような音を入れてくれて!よかったら良く聴いて探してみてください(笑)

マンタ」という曲は、音楽活動を始めたばかりの頃に書いた曲で、海の底に行けずに表面をずっと漂うマンタに当時の自分を重ねて、自分が音楽の世界に飛び来む時の怖さとか、そういう想いを書いた曲なんです。

ひとつひとつの曲にその時の思いが込めてあるので色々聴いて感じていただけると嬉しいです。

かわらかのさんといえば日本各地を歌って回っている印象があります。そうやって旅にでようと思ったきっかけは何ですか

私実は過去にお家から出られなくなった時期が2カ月くらいあって。その時は音楽活動を精力的にやっていたわけではないんですが、その時に大学時代からの付き合いで同じように今も音楽をしている友人が「私は車で日本を転々と歌って回る!そんなふさぎ込んでいる場合じゃないよ、あなたの音楽は素敵なんやからもっと外にでなさい」って言ってくれて、その子がツアーに連れ出してくれたんです。

最初に広島あたりに行って、中国地方から福岡まで一緒に回らせてもらって。沖縄も行ったことがありますね。2週間一緒に回らせてもらったときに「めっちゃ楽しい!」と思って。それがきっかけで「じゃあ次は一人でツアーいってみよう」と思って活動をし始めたんです。

地方で歌うならではの思い出などありますか?

やっぱり、地方だからこそ出会う人がたくさんいて。そこでしか無い出会いが。そこのお店に来てそこの音楽を聴きに来る人たちが、結構いろんなところにあったりして。鹿児島のあるお店でご飯を食べていたときに隣の席の人がお菓子屋さんをしていて。私が音楽しているという話をしたら「一曲歌ってよ」と言ってくれて。そのお菓子屋さんの方が実は自分のお店で時々ライブイベントをしている人だったんです。その場で一曲歌ったらぜひ家に歌いに来てほしいと言っていただいて。

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そこから、その方のお店に歌いに行かせてもらったら、ご近所さんたちが集ってくださってほぼワンマンライブみたいになって。私がそのお店に歌いに行かなかったら出会えていなかった方たちだと思うんですが皆大歓迎してくれて。地方にいくとご縁や繋がりが強まって面白いなと思って。音楽が関係ないきっかけでも歌につながったりして。

歌い始めたとき、姫路だけだったんです。特別なことが無い限り県外には歌いに行かなかったんですけど、九州の福岡には縁があって何度か行ったりしていて。神戸や大阪は遠いな、と感じていました。今でこそ神戸や大阪には沢山歌いに来させてもらっていますが当時は九州のほうが気軽に行けたりしていて、不思議ですよね。

次に行ってみたい場所や挑戦したいことはなんですか

ツアーは2周目がもう少し回れていないところがあるので、四国にいったりとか。また東北も行ったりするんです。

挑戦してみたいことは、面白いライブを自分で企画していけたらいいなと思っています。ワンマンでもブッキングでもいいんですが、例えばプラネタリウムチックにライブハウスを彩って、お客さんに寝袋とか持って来てもらって寝ながら聞く。みたいな(笑)

他にも足湯でライブとか、森の中とか海辺とか。そういう少し変わった面白いライブをしていけたらなと思っています。音楽のみではない価値や体験のできるイベントをしてみたいですね。

気づけば今年はいつの間にか150本くらいライブをしていて。その1本1本がもちろん大事なんですが、その中でもこう自分でももっとワクワクできるイベントを提供…というよりみんなで楽しく音で遊びたいだけなんですけど(笑)楽しいことができたらいいなと思っています。

かわらかのさんの普段の生活での趣味や余暇はなんですか

私現実逃避が好きすぎて、映画に入り込んだりとか。音楽も現実逃避の一環だと思うんですが。水族館に行ったり、滝とか鍾乳洞をみたり、ディズニーランドも行きたいし…エンタメのような場所が好きです。空想したりするのも好きです。ツアーにいくとここぞとばかりに神社や水族館に行きたい!という欲がでますね。

かのさんにとって音楽とはどういうモノですか?

私、音楽をしていないとちょっと病んじゃうんですよね。言い方はよくないけれど、だんだん気分が落ち込んでいっちゃうというか、だから私の中で音楽をしないという選択肢が無いんです。汚い話ですが、知り合いのミュージシャンと話していた時に音楽を外に出さないと溜め込んでしまい、心や体に影響が出るという意味で、排泄物に例えたことがあります。習慣というよりはなくてはならないものです。

今後こういう曲を作ってみたいななどありますか。

「海に恋」は結構空想などのインスピレーションが多いんですが、もうちょっと日常で普段思っているようなことを今度は弾き語りのみでカタチにできたらいいな。と思っています。ライブをしていても「この曲の音源ないの?」と言っていただくことがあるのでそれをカタチに出来たらいいなと思います。

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最後に一言読者に向けてお願いします。

色んな人に会えたら嬉しいです。会いに行くので、会いに来てください。